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ADHDと脳波検査について②脳波とfNIRSは客観的バイオマーカーとなりうるか

・日本において機能的MRIfMRI)の代わりとして広く用いることができるように研究が進んでいるのが機能的近赤外線スペクトロスコピー(fNIRS)である。NIRSといえばだいたいのものはfNIRSのことを指しているといって差し支えないと思われる。

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・fNIRSは開発当初はかなり眉唾物だと言われていた。当たり前だが脳の血流を測定するというのは解像度が滅茶苦茶に荒かったし、プローブの当たり方によっても像が見えにくかったし、製品の規格も雑だったからである。

・しかし、設備投資が安価(fMRIと比較すれば)で、かつ誰でもさっと使えるということは普及を後押しして、認知症超最先端国かつ発達障害の(実は)先進国である日本においてfNIRSの研究は圧倒的に進んでいる。(ただ、Pubmedを見ていて日本ばかりfNIRSの研究が出てくると、どこか外部の国や機関から妥当性を検証してもらえたりすることの重要性を感じずにはいられない)

 

・そして現在では、ADHDの客観的な診断補助方法として、fNIRSと逆ストループ再生課題を組み合わせた方法が非常に有用性が高いことが2年前に発表されている。(逆ストループ課題というのは「色を答えず単語を答える」というもので、「緑色で書かれているきいろ」はきいろを指せば良い。この間の反応時間の遅れと脳の血流量の関係を利用したものが診断予測につながるとされている。)


プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

・プレスリリースによると、ADHDのバイオマーカーの探索のため、逆ストループ課題遂行中の行動及び前頭葉脳血流動態(fNIRS )に機械学習を適用して診断予測精度を検討した。(下図)

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・その検証のためADHD児170例、定型発達児145例のデータを用いた。その結果、感度88.7%、特異度83.8%、受信者操作特性(ROC)曲線下面積0.90の精度が得られた(図.2)。この結果から、機械学習を適用した抑制課題の評価法はADHD児の診断補助として有用性が高いことが示された。


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・本研究によって得られた知見を応用して、株式会社スペクトラテックとの共同開発を行い「おちつき度 測定装置」として、小児のおちつき度合いを短時間に測定することが可能なシステムの製品化に成功している。(注意:医療機器ではない)

・仮に「“脳波によって発達障害を診断する”」と言う医師がいた場合には、Θ波/β波比、前頭葉β波、MMN波、fNIRS、ストループ課題など、なにを併用して診断を下しているかを聞いた方がよいと思われる。いずれもまだそれらは「ADHDの診断補助」なのであって、確定された手順に基づいておらず、承認された診断方法ではない点に注意が必要である。(光トポ、発達障害、診断などの単語で検索するとバンバン出てくる)

・ただ、少なくとも、多くの人はADHD-RS+CAARS+臨床での様子(+配偶者、親兄弟、友人、昔の通知表、エトセトラの証言)で終わってしまうだろうから、それに加えて客観的な証拠が加わることは、疾病をある意味受け入れやすくなるのではないかという気もしないわけでもないので、そういう意味で自分のことを納得させたい人には勧めてもいいのかも知れない。(それに、機械は容赦も何もないので、弾かれたら納得できるだろうとも思えるので…)

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