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ADHDの薬物治療はてんかん発作を増やさせない // 国際てんかん連盟

ADHDの薬物治療はてんかん発作を増やさない|2019年2月 国際てんかん連盟

【要約】

スウェーデンコホート研究によると、てんかん発作のリスクは、ADHDの投薬治療を行っても増えないことがわかった。てんかんに加えてADHDを併発している人は多いが、ADHD治療薬の医薬品添付文書に記載された「てんかん発作の危険性」からADHDの投薬治療をためらう人は多いと考えられる。しかし、投薬治療を行っても発作のリスクは増えないことが実証された。

ADHD medication does not increase seizure risk // International League Against Epilepsy

スウェーデンで行われた大規模なコホート研究では、21000人以上のてんかん患者の中から8年間に渡って診断を受けている1605人を追跡調査した。同様に、その中でスウェーデンの診断基準でADHDの投薬治療を行っている人も8年間追跡調査した。

発作回数を分析したところ、ADHDの投薬治療を行っても、投薬治療前後と比較してもてんかん発作のリスクは増えないことが分かった。むしろてんかんは生じにくくなっていることが分かった(下図、上から二段目と三段目の結果が投薬治療前。上から四段目と五段目が投薬治療後。)

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図はADHD投薬治療前後の、個人の急性てんかん発作の相対危険率 (IRR) を基準値と比較したもの。995人のてんかんの履歴から計算している。 BrikellI ら、2019。

「個人の間でリスクを比較するとなると、あまりに多くのことが絡みすぎて、明確に言えることなんてほとんど無くなるんですよ」と研究者のケルシィー・ウィッグス、インディアナ州立大学医学博士。「だから単純化しなくちゃいけないわけです。薬を使っているのか、使っていないのか。そうして他の影響を除くわけです」


他のグループでも、同様にてんかん発作の頻度とADHDの投薬治療は無関係であり、確実にリスクを上げることとは無関係であることが分かった。

「この研究はADHDてんかんを持つ子どもにとっての朗報です」とキムフォード・ミードゥーてんかん及び神経学教授・スタンフォードてんかんセンター長。「これで医師も適正量での治療を勧めることができるでしょう」

昨年米国で行われた80万人を対象とする大規模なコホート研究においても、 ADHDの薬物治療は、てんかんを発症している人、およびてんかんを発症していない人においても発作リスクを上昇させないことがわかった。

「小児のうちに『てんかんがあるから』と治療をためらって、成人になってから精神的な問題が生じたり、学業面での問題が生じたりすることよりも、適正な量の治療薬で治療を受ける方がメリットがあるのです」とキムフォード教授。

米国と欧州では、てんかんのおそれからメチルフェニデートなどの精神刺激薬をADHDてんかんを併発している患者に用いることをためらう傾向にある。「良い面ばかり見ようとすると悪い面が必ず目立ちます。当然、まれではありますが、てんかんが副作用として生じることは避けられません」とウィッグス博士。

頑健な結果:
「研究の大きな目的はサイズです」とウィッグス博士。「まずは研究サイズそのものが十分に大きなものである必要があります。私たちは“何もない”データを関連付けできないために、その解釈をすることがとても下手ですが、小さく関連が見やすいすぐに結論にたどり着ける研究を好みます。」

確かにスウェーデンコホート研究においてはてんかんの診断や類型については記載がないし、用いている抗てんかん薬や服薬状態についても情報がない。てんかん発作については病院と患者に関わる専門家に頼るデータに依存している、とウィッグスも認めている。

著者らはADHDの治療薬の医学的なガイドラインに記載されたように、てんかん発作が生じるかも知れないことを認めている。そのためにADHD治療薬のスウェーデンでの処方量も低下した。

「たとえADHDであっても、発作をコントロールできなくなったらどうしようと、リスクを考えて治療に踏み切れない人もいると思います」とトールビョルン・トムソン、カロリスンスカ研究所教授。「これらの研究結果はてんかんのためにADHDの治療に踏み切れなかった人を安心させるものです」

 

 

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